初対面のブリーダーさんは、掃除を終えると成犬たちを順番にケージに入れました。仔犬達は、別のサークルのようなところにいました。全部で5匹の仔犬がいました。里親募集の仔犬は、事前にお話のあった通りで既に別の里親に決まったとのことで現地にはいませんでした。里親募集の仔犬については、ルーカスが亡くなる前の生まれでしたから、なんとなく現地にいないような気がしていました。
5匹の仔犬のうち2匹は既にオーナーが決まっていて、1匹はブリーダーさんのところに残す牝の仔犬で残りの2匹が選択可能な仔犬とのことでした。導かれているような気がして何か特別なものを感じたら絶対に逃さないと決意して来ましたけど、自分にはルーカスを予感させるような特別なものは何もわかりませんでした。ただただ仔犬がみんな可愛くて、どれも人懐っこくて快活でこれだけでも来てよかったと思えました。
ブリーダーさんからフラットコーテッドレトリーバーの血統のことなど色々と教えてもらいました。またルーカスの話もたくさん聞いてくださいました。フラットコーテッドレトリーバーの血統には大きく二つがあり、スウェーデン血統とイギリス血統に分かれるそうです。アメリカ血統と言われるものもありますが、これはスウェーデンやイギリスから輸入した犬が定着したもので米国の人たちは犬種のスタンダードに関係なく好みによって形を変えてしまいます。米国のドッグショーで秋田犬や柴犬を見ると明らかに違和感があります。自分の知っているのと違うと感じてしまいます。
日本には、欧州の正統な血脈のフラットやアメリカのショータイプのものなど様々な犬が入ってきて、もはや訳がわからない状況とのことでした。イギリスやスウェーデン以外の欧州、チェコスロバキアやノルウェーなどから入ってくる犬達もいますが、これらはスウェーデンから輸入して育てたもので元々はスウェーデン血統とのことでした。ここには、ブリーダーさんのこだわりで欧州の正統なスタンダードを継承するフラットしかいません。随分昔に日本でもイギリスからフラットを輸入した方がおられたそうです。ところが繁殖しまくって犬をばら撒いたためイギリス人がそれを気に入らず、それ以降日本にイギリスからフラットが入ってこなくなったそうです。ブリーダーさんはどうしてもイギリス血統のフラットが欲しくて直接イギリスの犬舎に交渉して輸入したそうです。ここにはイギリス血統のフラットがいて、たぶん現在の日本ではここだけだと思うとのことでした。
スウェーデン血統のフラットについては、自分自身も世界最高の犬はスウェーデン産のフラットコーテッドレトリーバーというのを何かで見た記憶がありました。世界最高といっても何を基準にしているのか定かではなく、ただ自分もフラットという犬種が大好きなので印象に残っています。イギリス血統とスウェーデン血統のフラットの違いは、マズルから額にかけての形状と性質が少し異なっているとのことです。イギリス血統のフラットはマズルから額の部分の段がやや深くて、スウェーデン血統のフラットは段差が浅くほぼまっすぐだそうです。イギリス血統のフラットの性質はこの犬種としては落ち着いていて、スウェーデン血統のほうがハイパーとのことでした。ハイパーというのは、テンションが高いということで、勝手な想像ですが、スウェーデンでは本来の狩猟目的でフラットを改良してきたので、そのようなテンションの高い性質が好まれたのではないかと想像しています。
フラットコーテッドレトリーバーの寿命は大体が10年前後で老衰で亡くなる犬は少ないそうです。というのもゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーのように数が多く普及している犬種の場合は、交配するのも選択肢が多く問題になりにくく、一方のフラットコーテッドレトリーバーのようにゴールデンやラブと比較して数の少ない犬種の場合は、少し遡るとすぐに血統が重なることが頻繁に発生するそうです。こうしたことから病気を発症しやすく老衰で亡くなるケースが少ないのだろうといった口ぶりでした。ルーカスはそれなりの時間を一緒に過ごしてくれたのだなと改めて感謝の気持ちがさらに深まりましたが、かといって救われたような気持ちにはなれません。十分に自分自身ができなかったにも関わらず本来の寿命程度を全うできたのであれば、自分がもっとしっかりしていたら、さらに長く一緒にいられたはずとの思いは変わりません。
さて仔犬についてです。現在ここにいる仔犬達は、ここに残ることになっている牝の仔犬以外が兄弟で両親はチェコスロバキアからの輸入とのことでした。つまりスウェーデン血統ということになります。ルーカスがここに導いてくれたとしたならば、きっと何かある、その特別な何かを感じたら絶対に逃さないようにしようと注意深く観察したのですが、残念ながら自分には何にも感じることができませんでした。どいつもこいつも本当に可愛くてオーナー決定済みの仔犬も今回残っていた2匹の仔犬もどれも元気で活発で人懐っこくてどれを選んでも問題など無さそうな気がしました。次回出産の見通しの交配はスウェーデン産の親犬とのことでしたが、自分としてはこの日に初めて対面した仔犬に余程の違和感がなければ、ここで決めて帰ろうと考えていました。
つづく
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