ビタミンDについて

ビタミンDには、免疫を調整する機能があります。欠乏すると制御性T細胞が働かなくなり炎症を抑えることができなくなります。
7/11にビタミンDを与えるのを止めて以降のルーカスの経過を考えるとビタミンDの摂取を続けていたら、もう少し良好な経過を辿れた可能性があります。
というのは、ビタミンDを止めて以降の血中カルシウム値は高止まりしたままで、このことから腫瘍による増加であったと考えられること、そして7/11以降の経過で炎症が激しくなっていったと見受けられるからです。
もちろんビタミンDを続けたとしてもそれが腫瘍を克服できるものではないため、最終的な結果は変わらなかったと思います。しかし腫瘍が進行しても炎症が抑えられることで多少は過ごしやすかったのではなかろうかと考えています。
腫瘍のような炎症性疾患の場合は、炎症を抑えるためにビタミンDは多く消費されることから血中のビタミンD濃度を高く維持しておく必要があると思います。
いずれにしてもビタミンDの免疫における役割を考えると炎症性疾患の際に血中のビタミンDが欠乏することで予後が悪くなってしまうということは容易に判ると思います。
ビタミンDの免疫調節機能
・抗菌ペプチド活性化→自然免疫改善
・炎症メディエーター発現阻害
・抗炎症メディエーター産生増加
・1型ヘルパーT細胞抑制
・制御性T細胞レベル上昇
・主にグルタチオンの遺伝子発現増加
抗菌ペプチドとは
細菌やウイルスから体を守るために生体防御の機能として備わっているアミノ酸が結合した物質で抗生物質と異なり耐性菌を生み出しにくい
抗炎症メディエーターとは
マクロファージ等から放出される生理活性物質で炎症修復過程で出現し、炎症を収束させて慢性化を防ぐ
1型ヘルパーT細胞とは
細菌やウイルス等の異物に反応する免疫細胞でB細胞、キラーT細胞、NK細胞、マクロファージなどの細胞を活性化、細菌やウイルスを貪食して排除、炎症性サイトカインを産生する
ビタミンDには、腸管からカルシウムを吸収しやすくするという機能もあり、健康な状態での過度な摂取については高カルシウム血症も懸念されるため注意が必要です。
ビタミンDについては花粉症との関連やコレステロールとの関連についても調べてみると興味深い内容が見つかると思います。
国立がんセンターのレポートでは、血中カルシウムの濃度を高めることで何らかの癌の罹患リスクを低減するというのもあります。

血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクについて | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

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栄養素などの役割やその機序について知っておくことはとても重要と感じています。それによって様々な情報について自分で考え判断できるようになるからです。
世の中の情報は様々なバイアスがかかっています。必ずしも正しいことを知らせるための情報ばかりではなく、他の意図があって流されている情報も多くあります。特に医療関係の情報については商業的なバイアスのかかったものが多くあるため、自身で判断できるようになっておく必要があると考えています。

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